This article was first published by Public Rhythm (June/2016)

ー〈DFA Records〉のJonathanが勝手に「解散」って言っちゃったんだよね。インターネットってやっぱり危険な場所だよ。

2014年に各メディアが一斉に解散したと報じたThe Rapture。そのフロントマンであり、当時あまり多くを語らなかったLuke Jennerが今月ソロとして日本を訪れ、アニエスベー銀座Rue du Jour店が企画するマンスリーイベント「アニエスベー キオスク」にてアコースティック・ライヴを、そして「Taicoclub」のアフター・パーティとして渋谷のWombで開催されたイベントでDJセットを披露した。
「アニエスベー キオスク」でのアコースティック・ライヴは、公開インタビューを挟んだ2部構成でおこなわれ、「Sail Away」等The Raptureの曲も披露。シンプルなセットであるがゆえに彼の伸びやかな歌声がより映えていた。実は彼にとってこれが初のアコースティック・ライヴ。詰めかけた大勢のファンは、リラックスしたムードの中貴重な一時を過ごしていた。今回紹介するのはそのイベント前に実施したインタビュー。Lukeは想像していたよりも饒舌で、解散報道の裏側など色々と興味深い話を聞くことが出来た。

Interview: Luke Jenner (The Rapture)
by KanouKaoru
Translation by Haraguchi Miho
Photo: KanouKaoru

–よろしくお願いします。日本にはいつ着いたんですか?

Luke Jenner (以下Luke): えっと昨日の朝かな……多分 (笑)

— (笑) 今もニューヨークにお住まいですか?

Luke: ああ、妻に出会ったのも、息子が生まれたのも、プロのミュージシャンになったのもニューヨークなんだ。未だに一番安心を感じる場所だよ。

–ありがとうございます。では早速ですがThe Raptureの現在について教えて下さい。以前MusicFeedsのインタビューで解散を否定するような発言をされていましたが……

Luke: ああ、〈DFA Records〉のJonathanが勝手に「解散」って言っちゃったんだよね。僕達がアナウンスしようと思ってたわけじゃないんだ。インターネットってやっぱり危険な場所だよ。今はもう一人のメンバーであるVitoがあまりThe Raptureとして音楽をしたくない状態なんで活動を休止しているというわけなんだ。ずっと色んなところでものすごい数のライヴをしていたし。でも9歳からずっと知っている仲だから、今も彼が僕にとって大切な存在であることに変わりはないよ。

–解散と報道された時に自分たちで特にコメントをしなかったのは?

Luke: Kanye Westみたいにはなりたくないのさ。彼って本当にSNSの中で生きているっていうか……そういう風にはなりたくないって考えているんだ。当時自分たちがちょっと大変な状態であったのは事実だけれど、あまりそういうパーソナルなことを大っぴらにしたくはなかったんだ。

–なるほど、今でもVitoさんとは会ったりはするんですか?

Luke: 僕は公園でソフトボールをするような生活をしているんだけれど、向こうは相変わらず飲んだりしてるみたいだね。僕は7年位お酒をやめているんだけれど、Vitoはそれが気に入らない、飲まないなら楽しくないって怒るんだ。 (苦笑)
あと、前に彼が7万人位の観客がいる大きなライヴの前にお酒の飲み過ぎで足を怪我したことがあって、それをプロとしてどうなんだって怒ったんだけれど、そのことについても僕に怒り返してるんだ。 (苦笑) まあ、それ以外にも彼は家族に関する問題を抱えてるから……今は彼には時間が必要だと思うんだ。
–そうでしたか。そうするとまだまだThe Raptureとしての活動再開は難しそうですね。

Luke: ああ、今年の1月にVitoと話したんだけれど、やっぱりまだやりたくないって言ってたよ。いつか彼がまたその気になったら始めたいね。

–いつかその日がきたらいいですね。それこそLCD Soundsystemのように。

Luke: 実は最近LCD Soundsystemのコンサートを見に行ったんだ。まるで高校の同窓会みたいだったよ。なんか地元に帰っているみたいな気分だったな。

-結構感化されましたか?

Luke: ああ、色々と考えさせられたね。

–現在はソロとしてどのような音楽活動をされているんですか?

Luke: 曲作りはいつもしているんだ。ギターを横に置いて寝てるから思いついたら起き上がって書いたり、散歩中にアイディアを電話に録ったりね。本当にいつも曲作りをしている。それこそ取り憑かれているように… (笑)
だから曲は沢山あるんだけれど、アルバムにするにはプロデュースが追いついていなくてね……曲作りと並行して自分で学んでもいるんだけれど、人に頼むかもしれないな。あとLucky Blue Eyesっていうユニットをやっている。それプラスDJだね。

-以前ラジオ番組Beats in Spaceに出演した際に「All My Love」というソロ名義の曲をプレイされていましたね。The Raptureと比べるとしっとりとした雰囲気の曲でしたが、アルバムもそういう方向性なんですか?

Luke: 10分くらいの曲だよね。まだまだ未完成のやつさ。本当に色んな曲を作っているからまだまだどんな内容になるかはわからないな。

–今回のライヴでThe Raptureの曲はプレイしますか?

Luke: もちろん。自分の曲であることに変わりはないしね。僕の人生の一部さ。10年前に作った曲を今歌って改めて気付かされることもあるよ。自分では聴きたくなくて避けたりしている曲もあるんだけれど、やっぱりリクエストされることもあるしね…… (苦笑)

–ソロでのアコースティック・ライヴはThe Rapture休止後からされていたんですか?

Luke: 今まで全くやったことがないんだ。怖くてね。Neil Youngみたいなソロ・ミュージシャンは大好きなんだけれど、やっぱり自分の歌とギターだけっていうのはごまかしが効かないからね。

–そうだったんですか! 今回のイベントは何故OKしたんですか?

Luke: まあ、The Raptureの頃から挑戦してみたかったことではあるんだ。ラジオとかから依頼もあったんだけれど、当時は他のメンバーからバンドのイメージと違うからって止められてたんだよ。でも、今回こうして依頼がきて、今の僕を止める者はいなかったからOKしたんだ。

–結構練習してきました?

Luke: ちょっとね。練習も大事だけれど、実際のライヴとは全然違うものなんだよね。自分の中から何が出てくるのか……それによってライヴは変わってくる。やっぱり自分の声とギターだけだと全然違う表現になるし。

–このイベントの後にはWombで開催する「Taicoclub」のアフター・パーティにDJとして出演されますね。

Luke: うん、Arcaも出るやつだ。

–Arcaは聴きますか?

Luke: ああ、すごく好きだよ。前のアルバムより今回のアルバムの方が好きだね。流れがすごくいいと思うよ。前のアルバムにあった複雑さがより滑らかになっている。

–確かにすごく聴きやすくなりましたよね。DJはThe Rapture時代からされていたんですか?

Luke: ああ、今から15~6年前にバーで働いていたんだけれど、その頃からやっているんだ。あんまり人が沢山来るようなところじゃなかったんだけれど、後で大物になるような人たちが沢山いたよ。そこでDJカルチャーを学んだんだ。
さっき話してたBeats in SpaceのTim Sweeney(同番組のホスト)ってわかる? 彼は当時バーに来るには若すぎたんだけれど、バーの外で待っててDJをしに入ってきてDJをしたらまた外に出る……そんなことをやっていたよ。そこがプロのミュージシャンになる前の最後の職場だったね。

–最近DJでよくプレイしている曲はありますか? 単に気に入っている曲でも。

Luke: Lucky Blue EyesのプロデュースをしてくれているBarntの曲だね。

–今回の来日中オフ日には何処かに行く予定はありますか?

Luke: 明日には妻と息子が日本に来るんだ。息子は来月で10歳になるんだけど、こっちに住みたいって言うくらい日本が大好きで、一緒にアニメをよく見させられるんだ。『HUNTERxHUNTER』って知ってる? 息子はあれが大好きでね。あと『ファイアーエムブレム』ってゲームが大好きで、それを一緒にやらされたりもする。だから秋葉原の「スーパーポテト」っていう店にも連れていくんだ。

–「スーパーポテト」というと古いゲームを集めているお店ですよね。それは息子さんが自分で調べたんですか?

Luke: もちろん。なんでも調べて知ってるよ。彼はオタクなんだ。 (笑)

–ハハハ (笑) そろそろ時間ですね…そういえば、この前Danger Mouseがあなた達の古いセッション音源をSoundCloudに投稿しているのを見かけたんですけど知ってますか?

Luke: ああ、友達に「こんなのアップされてたけど知ってる?」って教えてもらって気づいたんだけれど、あれはよくなかったね……。

―あれも勝手にされてたんですね。 (笑)

Luke: すぐ彼に「なんでそんなことしたの!?」ってメールしたんだけれど、まだ返事がないんだよ。 (苦笑)